先日,NHK News Webというウェブサイトに「裁判迅速化法10年 課題は」というニュースが掲載されていました。
このニュースでは,『「裁判迅速化法」は司法制度改革の一環として速やかな裁判を実現する目的で作られたもので,最高裁判所は法律が成立してから今月で10年になるこの時期に報告書をまとめました。それによりますと,去年,全国の地方裁判所に起こされた民事裁判は16万件あまりで,最も多かった平成21年よりも7万件余り少なくなりました。一方で,平均の審理期間は,最も短かった平成20年と21年が6.5か月だったのに対して,去年は7.8か月と逆に長期化していることが分かりました。』と報道されています。
裁判の迅速化を図るための法律ができたのになぜ長期化しているのかという点について,最高裁判所が纏めた「裁判の迅速化に係る証に関する報告書」では『「民事第一審訴訟(全体)」の平均審理期間についてみると,平成 18年以降の顕著な短縮化と,平成 22 年以降の長期化は,前述の過払金返還請求事件の事件数の動向による影響を受けていることがうかがわれる』との分析がなされています。
なお,上記報告書には昭和24年からの平均審理期間のデータが記載されているのですが,昭和49年前後の平均審理期間は「17.3か月」と,実に1年半以上もの時間が裁判に費やされていました(2頁)。
それから比べれば相当に短縮されたとはいっても,結論が出るまでに8か月近くもかかってしまうというのでは,当事者にしてみれば「長すぎる!」となりますよね。
依頼者の方から「なんでそんなに長くかかるんですか?」,「もっと早く結論が出ないんですか?」と尋ねられるたびに,「すみません」と謝ってしまいます。
ちなみに,(ひとつの訴訟について)裁判期日の開かれる頻度がどの程度かご存知でしょうか?上記報告書では「1.8月に1回」というデータが示されています(7頁)。そうすると,審理期間が7.8か月とはいっても,実際に審理がおこなわれるのは4~5回ということになります。
短期間に集中して審理が実施されれば審理期間の短縮が図れそうですが,裁判官・原告(代理人)・被告(代理人)三者の日程をあわせるのは,なかなか難しいかもしれません(現在のように,期日が入るのがかなり先になる場合でも,なかなか都合があわずに結局2か月以上空いてしまうということもあります)。
※裁判の期間とは関係ありませんが,上記報告書には訴訟代理人が選任された割合についてのデータも掲載されており,民事第一審で原告・被告ともに訴訟代理人が選任されているのは,37.6%となっています(6頁)。
これを高いとみるか低いとみるかですが,今次の司法制度改革の方向性を基礎づけた司法制度改革審議会『司法制度改革審議会意見書』において謳われている「法曹に対する需要は,量的に増大するとともに,質的にも一層多様化・高度化していくことが予想される。現在の我が国の法曹を見ると,いずれの面においても,社会の法的需要に十分対応できているとは言い難い状況にあり,前記の種々の制度改革を実りある形で実現する上でも,その直接の担い手となる法曹の質・量を大幅に拡充することは不可欠である。 」(I 今般の司法制度改革の基本理念と方向)という理念からすれば,4割に満たない選任率というのはやはり低いと言わざるを得ないのではないでしょうか。
弁護士櫻町直樹
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