『ブラブラバンバン』

というタイトルを見てピンときた方は,相当のマンガ好きかブラスバンド経験者ですね。

話が180度転回するようですが,「夏の風物詩」といえば皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。

TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ㈱が実施した「夏に関するアンケート調査2013」の,「あなたが,「夏の風物詩」と聞いてイメージする行事・イベントやモノを 最大 3 つまでお知らせください。」という質問への回答では,「夏祭り・盆踊り」が1位(51.5%),「花火大会」が2位(47.0%),「海水浴・マリンスポーツ」が3 位(31.3%),そして,「高校野球(甲子園)」が4位(14.8%)という結果だったそうです。

私にとっての夏といえば,何と言っても「全日本吹奏楽コンクール」です。

全日本吹奏楽コンクールは,2012年度における参加団体数が10,607団体という巨大な大会で,そのうち中学校が6,661団体,高校が3,200団体と,中学・高校で全体の9割以上を占めています。

しかし,予選(地区大会・都道府県大会・支部大会)を経て全国大会に出場できるのは,中学,高校ともにわずか29団体という極めて狭き門であり,全国大会出場を目指すような強豪校は,日々厳しい練習に取り組んでいます。

私の通っていた学校の吹奏楽部は,全国大会に出場するような強豪校ではありませんでしたが,それでもコンクールが近くなると朝練・休日錬なども行っていました。

今は楽器から離れて長い時間が経ってしまいましたが,この時期になると,吹奏楽コンクールの結果についつい目がいってしまいます(わが母校(高校)の吹奏楽部は,県大会銀賞でした。残念・・・)。

 

弁護士櫻町直樹

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生活保護費引下げと最低賃金

来月(平成25年8月)から生活保護費(のうち,食費や光熱水費に充てる「生活扶助」の基準額)引下げが開始されることに対し,保護費引下げは憲法が保障する生存権(憲法25条1項:すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。)に反するとして,引下げの取消しを求める行政訴訟が提起される模様との報道がありました(H25.7.26 NHKオンラインH25.7.28付東京新聞ネット版など)。

一方で,厚生労働省の調査によれば,最低賃金法に基づき国が決定している最低賃金で雇用された場合,1か月の収入が生活保護費を下回る「逆転現象」が生じているそうです(H25.7.23マイナビニュース)。

ではここで,「生活保護によって受給する額>最低賃金で労働して得られる額」であるからといって,一概に「だから生活保護費を引き下げるべきだ」と言えるでしょうか。逆に,「だから最低賃金を引き上げるべきだ」という意見がでてきても全くおかしくないはずです。

この点について,日本生命保険が自社サイトで提供している「数字で読み解く 23歳からの経済学」という連載記事の中で,興味深いデータが紹介されています。

それは,「第27回 世界の中では低い方?日本の最低賃金水準は28% 雇用形態の変化との関係って?」という記事にある,世界各国の「平均賃金に対する最低賃金の水準」という図表です。

この図表は,OECD主要国における平均賃金に対する最低賃金の比率を国別に比較しているもので,OECDに加盟する21か国の平均が38%であるのに対して,日本はこれを下回る28%となっています。

もっとも高いのはアイルランドの52%,次がニュージーランドの50%となっており,アメリカ合衆国は日本をわずかに上回る33%となっています。ちなみに,日本より低いのはトルコ(27%),韓国(26%),メキシコ(24%)です。

このようなデータからすれば,世界的にみればむしろ日本の最低賃金は低過ぎるのであり,(生活保護費を引き下げるのではなく,最低賃金のほうを)もっと高くすべきだ,という意見にも一定の説得力があるように思われます(なお,民主党はマニフェストにおいて「中小企業を支援し,時給1000円(全国平均)の最低賃金を目指します。」としていました。「民主党の政権政策Manifesto2009」4頁)。

しかしながら,近時,不正受給がクローズアップされたこともあってか,不正受給に対する感情的な反発が呼び起こされ,一足飛びに「保護費引下げ」を容認する雰囲気が醸成されたように思われます。

もちろん,不正受給が許される訳ではなく,その防止も重要な課題であると思いますが,運用の問題と制度の問題とはきちんと区別して議論すべきであり,「生活保護の水準としてどの程度が適切か」ということは,不正受給の有無・多寡とは切り離してとらえるべきものと思われます。

なお,所得を保障する政策としては,生活保護のように一定の要件を満たした場合に支給されるのではなく,(大雑把に言えば)現実の稼得等によらず無条件で一定額が支給される「ベーシックインカム」というものもあります(大阪維新の会による「維新八策」には,「ベーシックインカム(最低生活保障)的な考え方を導入」との文言があります)。

ベーシックインカムについては賛否両論がありますが,経済評論家の山崎元氏が「ダイヤモンド・オンライン」に投稿している記事(「橋下徹氏が手に入れた「ベーシックインカム」という新兵器」など)が,手軽に全体を俯瞰できてよいと思います。

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記憶の変容

1987年(昭和62年)にノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進マサチューセッツ工科大教授のチームが,いったん体験した出来事についての記憶が,それを思い出すときに変容してしまう過程をマウスで再現することに成功したそうです(H25.7.26日本経済新聞ネット版H25.7.26GIGAZINEなど。後者のほうが詳しく説明されています)。

日経新聞記事では,「「冤罪(えんざい)を生み出す裁判の目撃証言が,いかにあやふやかを示したともいえる」としている」というチームのコメントも紹介されていました。

目撃証言の信用性が大きな問題となった事件として,「甲山事件」というものがあります。この事件は,ある施設で園児ふたりが浄化槽で溺死するという事故が起こった際,園児の目撃証言に基づき,施設に勤務する保育士が逮捕・起訴されたというものです。最終的に無罪で確定しましたが,判決が確定するまで実に20年以上を要しました(このときの園児の証言について考察したものとして,浜田寿美男「証言台の子どもたち―甲山事件 園児供述の構造」(日本評論社)があります)。

高木光太郎「証言の心理学―記憶を信じる、記憶を疑う」(中公新書)は,心理学の分野から記憶の変容についてアプローチした著作ですが,脳科学の分野においても研究が進むことで,記憶に基づく証言の信用性について,より慎重な吟味がなされるようになればよいと思いました。

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板橋生徒切りつけ事件の顛末

さる7月19日,東京都板橋区の路上において,生徒が刃物で切りつけられるという事件が相次いで発生したという報道がありました(7.20付朝日新聞ネット版)。

しかしながら,21日になって,いずれの事件も生徒が虚偽の被害事実を申し出ていたものであり,切りつけの事実はなかったとの報道がなされました(7.21付朝日新聞ネット版)。

生徒が虚偽の申し出をした理由について,報道では「親の気を引くため」であったとされています。

子を持つ親として,考えさせられるものがありました。

計見一雄という精神科医の方が書いた「戦争する脳―破局への病理 」(平凡社新書)という著作があります。

この事件の顛末をみて,ふとこの著作のことを思い出しました。

その中の一節を以下に引用します。

『(略)子どもの存在が否認されてしまうこともある。母子関係で一種の心理的盲点みたいなところに子どもが落っこちて,子どもの存在があたかもそこにないかのように行動する母親というのがある。母親が疲弊したり,育児環境が劣悪だったり,本当はこの子を欲しくなかったんだと思ったりしていた場合,子どもはそこにいるのに,泣いたり,わめいたり,笑ったり,母親に対して何かを投げかけてきている存在としての子どもは否認される。では否認された子どもはどうなるか?存在をに否認され,そこにいるのに<おまえはいない>と見なされたら,これは子どもに限らず,たとえばある権力構造,組織,社会の中で私はそこにいるのに,手を挙げても無視される,声を挙げても無視される,顔をしかめても無視されるという目に遭ったならば,その人はどうなるか?いじめの手口でそういうのがあるそうだ。シカトとかいう。たいがいはそういう目に遭ったら怒る。怒りは復讐に転じるであろう。母子の間でそういう目に遭った子どもが後年どういうことになるんだか,想像したくもない。』(同書17~18頁)。

なお,「想像したくもない」とありますが,少し後ろのほうで『いるのに見てもらえない子はどうなるか』ということでちゃんと述べられておりまして,『親に否認された子どもはまず間違いなく仕返しする。非行少年になったり,残忍な行動に走ったり,多くは病気になる可能性が高い』とあります(同書30頁)。

「まず間違いなく仕返しする」などと断言されるとなかなか恐ろしいものがありますが,「否認」の持つ(破壊的な)効果は,心に留めておくべきと思いました。

そしてまた,「否認」の対極として,我が恩師の「ありのままのあなたでいいんだよ,と子どもを受容することが,子どもに「居場所」を与え,生きる力になる」という言葉(こちらのエントリ「恩師結婚お祝いパーティー」をご覧ください。)を思い出しました。

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裁判の迅速化に関する法律

先日,NHK News Webというウェブサイトに「裁判迅速化法10年 課題は」というニュースが掲載されていました。

このニュースでは,『「裁判迅速化法」は司法制度改革の一環として速やかな裁判を実現する目的で作られたもので,最高裁判所は法律が成立してから今月で10年になるこの時期に報告書をまとめました。それによりますと,去年,全国の地方裁判所に起こされた民事裁判は16万件あまりで,最も多かった平成21年よりも7万件余り少なくなりました。一方で,平均の審理期間は,最も短かった平成20年と21年が6.5か月だったのに対して,去年は7.8か月と逆に長期化していることが分かりました。』と報道されています。

裁判の迅速化を図るための法律ができたのになぜ長期化しているのかという点について,最高裁判所が纏めた「裁判の迅速化に係る証に関する報告書」では『「民事第一審訴訟(全体)」の平均審理期間についてみると,平成 18年以降の顕著な短縮化と,平成 22 年以降の長期化は,前述の過払金返還請求事件の事件数の動向による影響を受けていることがうかがわれる』との分析がなされています。

なお,上記報告書には昭和24年からの平均審理期間のデータが記載されているのですが,昭和49年前後の平均審理期間は「17.3か月」と,実に1年半以上もの時間が裁判に費やされていました(2頁)。

それから比べれば相当に短縮されたとはいっても,結論が出るまでに8か月近くもかかってしまうというのでは,当事者にしてみれば「長すぎる!」となりますよね。

依頼者の方から「なんでそんなに長くかかるんですか?」,「もっと早く結論が出ないんですか?」と尋ねられるたびに,「すみません」と謝ってしまいます。

ちなみに,(ひとつの訴訟について)裁判期日の開かれる頻度がどの程度かご存知でしょうか?上記報告書では「1.8月に1回」というデータが示されています(7頁)。そうすると,審理期間が7.8か月とはいっても,実際に審理がおこなわれるのは4~5回ということになります。

短期間に集中して審理が実施されれば審理期間の短縮が図れそうですが,裁判官・原告(代理人)・被告(代理人)三者の日程をあわせるのは,なかなか難しいかもしれません(現在のように,期日が入るのがかなり先になる場合でも,なかなか都合があわずに結局2か月以上空いてしまうということもあります)。

※裁判の期間とは関係ありませんが,上記報告書には訴訟代理人が選任された割合についてのデータも掲載されており,民事第一審で原告・被告ともに訴訟代理人が選任されているのは,37.6%となっています(6頁)。

これを高いとみるか低いとみるかですが,今次の司法制度改革の方向性を基礎づけた司法制度改革審議会『司法制度改革審議会意見書』において謳われている「法曹に対する需要は,量的に増大するとともに,質的にも一層多様化・高度化していくことが予想される。現在の我が国の法曹を見ると,いずれの面においても,社会の法的需要に十分対応できているとは言い難い状況にあり,前記の種々の制度改革を実りある形で実現する上でも,その直接の担い手となる法曹の質・量を大幅に拡充することは不可欠である。 」(I 今般の司法制度改革の基本理念と方向)という理念からすれば,4割に満たない選任率というのはやはり低いと言わざるを得ないのではないでしょうか。

 

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憲法96条

安倍首相が,今年1月に開かれた衆院本会議において,憲法改正の発議要件を定めた憲法96条を緩和する方向での改正を目指すという考えを表明したことから,憲法改正の是非について様々な議論がなされています。

安倍首相のいう「緩和」について,自民党が発表した「憲法改正草案」によれば,現行の「総議員の3分の2以上の賛成」という発議要件が,改正草案では「総議員の過半数の賛成」とされています。

自民党作成の「日本国憲法改正草案Q & A」では,緩和する理由として「世界的に見ても,改正しにくい憲法となっています」,「国民に提案される前の国会での手続を余りに厳格にするのは,国民が憲法について意思を表明する機会が狭められることになり,かえって主権者である国民の意思を反映しないことになってしまう」という点が挙げられています。

しかし,上記の点は,96条改正の理由として適切でしょうか。

まず,「世界的に見ても改正しにくい」という点について。

憲法を改正する際の要件が,法律の場合よりも加重されている憲法を「硬性憲法」といいます(対して,法律と同等の要件で改正できるものを「軟性憲法」といいます)。

少し古い資料になりますが,衆議院が設置した「最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会」による「硬性憲法としての改正手続に関する基礎的資料」(平成15年)に添付された国立国会図書館作成「憲法改正手続の類型 諸外国の憲法改正回数」(資料の32頁以降)では,「通常の法律の成立要件に比較して加重された要件が課されるのが一般的」とされており,その例外(つまり,軟性憲法)として挙げられているのは,イギリス,イスラエル,ニュージーランド,タイのわずか4か国にとどまっています。

その他の国においては,議会による議決要件が加重されていたり,国民投票が必要とされていたり,あるいは,その双方が必要とされていたり等,何らかの形で要件が加重された硬性憲法であるとの調査結果が示されています。

つまり,「世界的に」みれば,改正しにくい硬性憲法のほうが多数なのです。

また,「主権者である国民の意思を反映しない」という点についても,自民党が480議席中294議席という多数の議席を獲得した先の衆議院選挙をみてみると,小選挙区において自民党の候補に投票した有権者の数は全有権者の24.67%,また,比例代表におけるそれは15.99%というデータが示されています(東京新聞ネット版)。

はたして,過半数どころか4分の1にも満たない有権者の支持しか受けていない場合であっても,「憲法改正は国民の意思である」として改正を発議できるようにすることが,妥当といえるでしょうか。

参議院憲法審査会「日本国憲法に関する調査報告書」では,近代憲法の「最も重要な特質は,(1) 内容的には自由・人権の基礎法であること,(2) 法的性格としては,国の最高法規であり,法体系の頂点に立って国家権力の恣意的発動を制約する「制限規範」としての意味を持つことである。」と述べられています(http://www.kenpoushinsa.sangiin.go.jp/kenpou/houkokusyo/houkoku/03_02_01.html)。

時の政権が国民の権利を制限したいと思っても,簡単にはそれを許さないのが憲法であるということ,そして,それこそが憲法の本質的な意義であることが,もっと強調されてもいいのではないかと思います。

 

弁護士櫻町直樹

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