という試算が,日経ビジネスオンラインの記事(H25.8.7「急速に経済価値が増す、家の中の家事育児」)で紹介されていました。
この「226万円」という数字は,家事代行サービス労働者の時給1029円(2011年時点)に,「無業有配偶女性」(いわゆる「専業主婦」)の年間無償労働時間である2199時間(1日平均6時間)を乗じて算出されたものだそうです。
また,この記事では無償労働が有する価値の対GDP比についても言及されていますが,「平成25年版男女共同参画白書」によれば,炊事や掃除等の家事,介護,育児,買い物等に使われた時間数をベースにその経済的価値を評価すると,年間約138.5兆円にのぼると推計され,これは日本の名目GDPの実に29.4%を占めるそうです(同白書第1部・28頁)。※そしてこの巨大な数字は,「女性の就業に伴い,従来主に女性が家庭で担っていた介護・育児・家事等の一部が市場化された場合,関連産業における需要が拡大し,経済に影響を与えることが考えられる」(同・6頁)という文脈において,一種の期待をもってとらえられています。
ちなみに,「専業主婦の『収入』はいくらか」という論点を弁護士の業務にひきつけてみますと,例えば,専業主婦の方が交通事故に遭って入院したような場合に,「休業損害」を請求することができるか,という形で現れます。
給与所得者であれば,入院によって働けなかったために賃金が支払われないことになりますので,当然,休業損害を請求することができます(なお,入院のため有給休暇を取得したような場合も,休業損害は請求可能です)。
では,もともと「賃金」という形では収入を得ていない専業主婦の場合,休業損害は「ゼロ」になるのでしょうか?
しかし,このような結論には何だか違和感がありますね。上でみたように,家事等が経済的に大きな価値を有する(他人にやってもらうとすれば一定の対価を支払う必要がある)ことからしても,また,家族生活を営む上での重要性に照らしても,入院によって家事等ができなかったのであれば,それに対する金銭的補償があって然るべき,といえそうです。
そのとおり,判例では,専業主婦の場合も休業損害が認められています(最高裁昭和50年7月8日判決集民115号257頁)。
その算出の仕方にはいくつかバリエーションがありますが,一般的には,「賃金構造基本統計調査」(いわゆる「賃金センサス」)に基づく,女性労働者全年齢の平均賃金(産業計・企業規模計・学歴計・女性労働者の全年齢平均賃金)をベースに算定されます。
ちなみに,平成24年賃金センサスに基づく女性労働者全年齢の平均賃金は約354万円となっていますので,1日あたりの休業損害は約9699円と評価されることになります。
弁護士櫻町直樹
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