相続税の課税対象,1200万世帯に倍増

という記事が平成26年7月27日付き日本経済新聞(ネット版)に掲載されていました(こちら→http://www.nikkei.com/money/features/69.aspx?g=DGXNASFS26013_26072014MM8000)。

平成27年1月1日以降に生じる相続については,平成25年度税制改正に伴う相続税法改正によって,これまで「5000万円+1000万円×法定相続人の人数」であった基礎控除額が,「3000万円+600万円×法定相続人の人数」に引き下げられるため,相続税の課税対象となるケースが拡大します。

上記日経記事に引用されている三井住友信託銀行の試算では,「夫婦・子ども2人」の4人家族を前提に,夫が死亡し妻と子ども2人が相続するとした場合(基礎控除額は3000万円+600万円×3人=4800万円),新たに590万世帯が課税対象となり,改正前の基礎控除額でも課税対象となる630万世帯とあわせて「1220万世帯」が,相続税の課税対象になるそうです。

そしてまた,新たに課税対象になる世帯は「三大都市圏が394万世帯で7割弱を占める」(上記日経記事)ということでした。これは,不動産(土地)の評価額が高くなる大都市圏においては,金融資産をそれほど保有していない場合でも,持ち家があれば課税対象になる可能性があるということですね。

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ちなみに,裁判所の統計によれば,平成24年度における遺産分割事件の総数は1万1737件にのぼっています(http://www.courts.go.jp/sihotokei/nenpo/pdf/B24DKAJ42~43.pdf)。

また,申立認容または調停成立という解決に至るまでに要した期間について,遺産の価額が1000万円以下の場合では総数2849件のうち「(6か月を超え)1年以内」が914件で最も多く,「(1年を超え)2年以内」というケースも464件となっており,相続人間での遺産分割協議がうまくいかず,裁判(調停・審判)手続に委ねざるを得ないときは,相応の時間(と費用・手間)がかかることになります(http://www.courts.go.jp/sihotokei/nenpo/pdf/B24DKAJ51~52.pdf)。

お盆の時期には親族で集まることも多いでしょうから,相続が「争族」とならないよう,十分に話し合っておくことや,また,「遺言書」を作成して被相続人(遺産を残す人)の意思を明確にしておくこと(そして,それを相続人にも伝えておくこと)が重要です。

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弁護士 櫻町直樹
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精神障害の労災請求件数が1,409件(前年度比152件増)と過去最多

厚生労働省から,「平成25年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」を公表」というプレスリリースが出されていました。

これによれば,記事タイトルのとおり,精神障害についての労災請求件数が1,409件(前年度比152件増)と過去最多となったそうです。

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精神障害についての労災請求が認められた率(認定率)は,平成25年度において36.5%(支給決定件数:436件/決定件数:1193件)となっており,前年平成24年度からは若干(2.5%)の減少となっています(資料はこちら)。

一方,脳・心臓疾患についての労災請求に関する認定率は,同じく平成25年度をみると44.8%(支給決定件数:306件/決定件数:683件)となっており(資料はこちら),精神障害についての労災請求のほうが認められにくい傾向にあるといえます。

また,精神障害についての労災請求につき,都道府県別の認定率をみると,岩手県と富山県が85.71%(いずれの県も支給決定件数:6件/決定件数:7件)と最も認定率が高く,他方,和歌山県,島根県,香川県が0%となっており,都道府県によって認定率にかなり差がみられます(ちなみに,全国平均の36.5%を下回る認定率の府県は,計19府県です)。

精神障害の原因となった事象別にみて支給決定件数の多いものは,以下のようになっています。

・仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった(支給決定件数:55件)
・(ひどい)嫌がらせ,いじめ,又は暴行を受けた(同:55件)
・悲惨な事故や災害の体験,目撃をした (同:49件)
・(重度の)病気やケガをした(同:46件)
・1か月に80時間以上の時間外労働を行った(同:34件)
・セクシュアルハラスメントを受けた (同:28件)

これによれば,長時間の(時間外)労働よりも,仕事内容・量の変化や,職場の人間関係から精神障害を発症するケースが多いことが分かります。

使用者としては,労働時間についてのみならず,きめ細かな労務管理に留意する必要があるといえそうです。

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改正DV法:同居の交際相手からの暴力に対し,保護命令51件

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律は,法改正によって法律婚・事実婚の関係にある当事者以外に,「生活の本拠を共にする交際(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除く。)をする関係」(同法28条の2)にある場合も,相手方の暴力を原因とする保護命令(同法10条)の申立てが可能となりましたが,今年(平成26年)1月の施行から4月末までの間で既に51件,裁判所によって保護命令が発令されたそうです(例えば日経新聞H26.6.29付き記事)。

内閣府男女共同参画局ウェブサイトに掲載されている改正DV法についてのQ&Aによれば,「生活の本拠を共にする」といえるかどうかの判断は,「被害者と加害者が生活の拠り所としている主たる住居を共にする場合を意味するものとして考えています」とされています。

「生活の本拠」という文言(概念)は,他の法令においても用いられるものですが,具体的な判断にあたっては,「住民票の記載、賃貸借契約の名義、公共料金の支払名義等の資料から認定することができる場合はもとより,そのような資料が存在しない場合であっても,写真,電子メール,関係者の陳述等から生活の実態を認定し,「生活の本拠を共にする」と判断することになると思われます」(上記Q&A)との説明がされています。

客観的な資料がなくても,諦める必要はないということですね。上記日経新聞の記事には,「男からのメールに「帰ってこい」などと同居をうかがわせる内容があったため,撮影して証拠として提出」とありますが,例えば,フェイスブックなどSNSへの投稿記事も,証拠として有用性がありそうです。

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