ある米国人女性が選んだ「安楽死」

末期癌のため余命6か月と宣告された女性が,11月1日,医師から処方された薬物を服用して「安楽死」したとの報道がありました(朝日新聞ネット版H26.11.3付記事など)。

この女性,ブリタニー・メイナード(Brittany Maynard)さんは,脳にできた末期癌のため余命6か月と宣告された後,それまで住んでいたカリフォルニア州から,安楽死が法律(Death with Dignity Act)で認められているオレゴン州に移り,そこで死を迎えたそうです(The Washington Post “Brittany Maynard, as promised, ends her life at 29″ by Lindsey Bever, Nov. 2, 2014 )。

オレゴン州のDeath with Dignity Actは,そのまま日本語に訳せば「尊厳ある死についての法律」といったものになり,「尊厳死」について定めたもののようにみえますが,法律の内容をみると,医学的に治療・回復不能であり,余命6か月(以内)と診断された終末期の患者に対し,(当該患者の申請に基づき)医師が致死性の薬物を処方するための要件・手続等を定めたものになっていますので,直截に「自殺幇助法」と訳しているケースもみられます。

なお,Death with Dignity Actが認めているのは,医師に処方された薬物を患者自身が服用するという方法による死であり,医師が患者に薬物を注射して死に至らしめること(euthanasia)は,オレゴン州においても禁止されています(Frequently Asked Questions, Q: Does the Act allow euthanasia?)。

そして,オレゴン州の統計によれば,Death with Dignity Actに基づき,医師から薬物を処方され,これを服用して死亡したオレゴン州民の人数は,平成25(2013)年において71人(処方された人数は122人)であり,同法が施行された平成9(1997)年からの累計死亡者数は752人(処方された人数は1173人)となっています。

ブリタニーさんの件が注目を集め,日本でも報道されたのは,彼女が,Death with Dignity Actのような法律を他の各州も制定すべきという運動をしていた(米国内において,Death with Dignity Actのような法律が制定されているのは,オレゴン州を含め5州のみ),今年10月に動画投稿・配信サイト「you tube」に投稿された動画が大きな反響を呼んでいた,29歳という若さであった(オレゴン州においてDeath with Dignity Actに基づき安楽死を選択した人の平均年齢は71歳(69%が65歳以上,最年少で42歳。平成25年データ)),などの事情があったからかと思われます。

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日本においては,刑法202条に「人を教唆し若しくは幇助して自殺させ,又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は,6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。」という規定がありますので,自殺を望んでいる者に致死性の薬物を渡すことは,自殺幇助罪にあたる可能性があります。

米国内においても,Death with Dignity Actに反対する意見は根強いようですが,はたして,日本において自殺幇助が合法化される日はくるのでしょうか。漠然とした印象に過ぎませんが,日本ではどちらかと言えば,延命治療を拒否する,いわゆる「尊厳死」に関心が集まり,安楽死(及びその合法化)についてはあまり議論がなされていないように思われます。

 

関連エントリ:「安楽死の年齢制限撤廃:ベルギー」,「自己決定権と胎児の命

弁護士櫻町直樹
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