「ぼったくり」防止条例

新宿のキャバクラ店で,客の男性に「金払えなかったら(拳銃で)はじかれるぞ」などと言って飲食代金約63万円(!)を請求したという都ぼったくり防止条例違反の疑いで,キャバクラ店経営者等が逮捕されたとの報道がありました(日本経済新聞ネット版H26.10.11付き記事)。

ぼったくり防止条例は,正式な名称を「性風俗営業等に係る不当な勧誘,料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例」といい,平成12年に東京都で制定されたのを皮切りに,北海道,大阪府,福岡県等において制定されています(条例の名称は各都道府県によって若干異なります)。

都の条例では,「何人も,特定の指定性風俗営業等の客に対し,粗野若しくは乱暴な言動を交えて,又はその者から預かった所持品を隠匿する等迷惑を覚えさせるような方法で,当該営業に係る料金又は違約金等の取立てをしてはならない。」(4条2項)と規定されており,今回のケースは,この条文にある「粗野若しくは乱暴な言動を交えて」,「料金・・・の取立てをしてはならない」に違反した(疑いがある)というものですね(違反した場合の罰則は,「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」となっています)。

ところで,今回は「金払えなかったら(拳銃で)はじかれるぞ」などという言動があったために条例違反=犯罪,よって逮捕となりましたが,「ぼったくり」だけであった場合にはどうなっていたでしょうか。

都の条例には,「当該営業に係る料金について,実際のものよりも著しく低廉であると誤認させるような事項を告げ,又は表示すること。」(4条1項1号)を禁止する規定がありますので,例えば,実際には5万円かかるのに「5000円ポッキリ!」などと言って勧誘したような場合は,「実際のものよりも著しく低廉であると誤認させる」として,条例違反となる可能性があります(罰則は,同じく「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」です)。

そこまでいかなくても,実際の料金よりも安い金額を言って料金を誤信させて勧誘したような場合は,「詐欺罪」に該当するケースもあり得ると思います。

しかし,そういう事情もない場合に,単に「料金が高い」というだけで何らかの犯罪にあたるかというと,それはおそらく難しいだろうと思います(民事上は,例えば,「公序良俗違反」等により(飲食などについての)契約は無効であるとして,料金の支払いを争う(拒否する)余地はあるかもしれません)。

君子危うきに近寄らず。

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弁護士 櫻町直樹
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