同性婚について2 アメリカ合衆国連邦最高裁判所が,同性婚を認めないことは違憲と判断

先日アップした「同性婚について」という記事に,「アメリカ合衆国においては,同性婚が憲法上保障された権利であるかどうかについて,近く,連邦最高裁判所の判断がなされるようです」と書きましたが,アメリカ合衆国連邦最高裁判所(以下「連邦最高裁)は,同性婚を認めないことは違憲である,と判断したそうです(日本経済新聞H27.6.26付き記事など)。

連邦最高裁ウェブサイトに掲載されている判決によれば,ミシガン州,ケンタッキー州,オハイオ州及びテネシー州に居住する14組の同性カップル及び(同性のパートナーを亡くした)2人の男性(以下「原告ら」が,原告らに「結婚する権利」あるいは「他の州では認められている合法的に結婚する権利」を認めないことは,アメリカ合衆国憲法修正14条(以下「修正14条)に違反している,として訴えを提起しました。

修正14条(在日アメリカ大使館ウェブサイトより)
第1項 合衆国内で生まれまたは合衆国に帰化し、かつ、合衆国の管轄に服する者は、合衆国の市民で あり、かつ、その居住する州の市民である。いかなる州も、合衆国市民の特権または免除を制約する法律 を制定し、または実施してはならない。いかなる州も、法の適正な過程*によらずに、何人からもその生命、自由または財産を奪ってはならない。いかなる州も、その管轄内にある者に対し法の平等な保護を否 定してはならない。*修正第5 条の注参照
第2項(略)
第3項(略)
第4項(略)
第5項(略)

各地裁は原告らの訴えを認めましたが,第6巡回区控訴裁判所がこれを覆したため,原告らは連邦最高裁の判断を求めました。

そして,連邦最高裁は「5対4」という僅差ながら,原告らに「結婚する権利」あるいは「他の州では認められている合法的に結婚する権利」を認めないことは,アメリカ合衆国憲法修正14条に反して違憲である,としたのです。

連邦最高裁は,修正14条は州に対して「同性間の結婚を許可すること」,「州外(他の州)において合法的に許可された同性間の結婚について認めること」を要請している,と述べました(The Fourteenth Amendment requires a State to license a marriage between two people of the same sex and to recognize a marriage between two people of the same sex when their marriage was lawfully licensed and performed out-of-State.)。

連邦最高裁はその理由(のひとつ)として,「結婚する権利は,個人の自由に内在する根本的なものであり,修正14条が定める適正手続及び法の平等な保護のもと,同性のカップルもこうした権利・自由を奪われてはならない(The right to marry is a fundamental right inherent in the liberty of the person, and under the Due Process and Equal Protection Clauses of the Fourteenth Amendment couples of the same-sex may not be deprived of that right and that liberty. )ということを挙げています。

また,ウォールストリートジャーナル(日本版)は,連邦最高裁がこのような判断した背景には,「同性愛」あるいは「同性婚」に対する社会の見方が大きく変化したことがある,としています(H27.6.27付き「米最高裁の同性婚容認までの急速な世論の変化」)。

上記記事では,連邦最高裁の法廷意見(the opinion of the Court)を書いたケネディ判事のコメントとして,「ケネディ判事は「20世紀後半になり、大きな文化的、政治的な動きにつれて同性のカップルがこれまで以上にオープンな生活を送り、家族を作り始めた」と指摘。同性愛者の権利に関する問題が裁判所に持ち込まれたのは「政府と民間の両方でこの問題についての議論が非常に広く行われた」からであり、「寛容な方向に国民の姿勢が変化した」からだと述べた。」と紹介されています。

翻って日本では,「夫婦別姓を認めないこと」(と「女性の待婚期間(再婚禁止期間)」)が憲法に違反するか否かについて,年内にも最高裁の判断が示される模様です(日本経済新聞H27.6.25付き記事「再婚禁止と夫婦別姓、大法廷で11月に弁論 最高裁 」)。

誤解されがちなのは,「夫婦別姓」といっても,法制審議会(法律の改正について審議する法相の諮問機関)が平成8年に答申した「民法の一部を改正する法律案要綱」において提言されたのは,結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める「選択的夫婦別姓制度」であり,「必ず別姓でなければならない」というものではありません。

日本国憲法13条は,「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と,「個人の尊重」を謳っています。

「姓」は,(異論があるかもしれませんが)個人のアイデンティティを成す要素のひとつであり,「結婚に際して変更しなければならない」(しかも,女性の側が変更することが圧倒的多数。厚生労働省「平成18年度「婚姻に関する統計」の概況」の「(3)夫の氏・妻の氏別婚姻」によれば,平成17年に結婚した夫婦の実に96.3%が夫の姓を選択している)というのは,憲法13条に違反すると考えるべきではないかと思います。

ちなみに,国立社会保障・人口問題研究所が調査・発表した「第5回全国家庭動向調査」(平成26年8月)によれば,「夫,妻とも同姓である必要はなく,別姓であってもよい」という調査項目に対する賛成割合は「41.5%」となっています。

上記調査結果からすると,夫婦別姓は時期尚早でありまだ導入すべきでない,という意見がでてくるかもしれません。

しかしながら,「個人として尊重される」ということは,多数決に馴染まない(むしろ,憲法上の権利(人権)として保障されることの最大の意味は,法律=多数の意思によっても奪われることがない,というところにあります)ものです。

最高裁の積極的な判断を期待したいところです。

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弁護士 櫻町直樹
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