板橋生徒切りつけ事件の顛末

さる7月19日,東京都板橋区の路上において,生徒が刃物で切りつけられるという事件が相次いで発生したという報道がありました(7.20付朝日新聞ネット版)。

しかしながら,21日になって,いずれの事件も生徒が虚偽の被害事実を申し出ていたものであり,切りつけの事実はなかったとの報道がなされました(7.21付朝日新聞ネット版)。

生徒が虚偽の申し出をした理由について,報道では「親の気を引くため」であったとされています。

子を持つ親として,考えさせられるものがありました。

計見一雄という精神科医の方が書いた「戦争する脳―破局への病理 」(平凡社新書)という著作があります。

この事件の顛末をみて,ふとこの著作のことを思い出しました。

その中の一節を以下に引用します。

『(略)子どもの存在が否認されてしまうこともある。母子関係で一種の心理的盲点みたいなところに子どもが落っこちて,子どもの存在があたかもそこにないかのように行動する母親というのがある。母親が疲弊したり,育児環境が劣悪だったり,本当はこの子を欲しくなかったんだと思ったりしていた場合,子どもはそこにいるのに,泣いたり,わめいたり,笑ったり,母親に対して何かを投げかけてきている存在としての子どもは否認される。では否認された子どもはどうなるか?存在をに否認され,そこにいるのに<おまえはいない>と見なされたら,これは子どもに限らず,たとえばある権力構造,組織,社会の中で私はそこにいるのに,手を挙げても無視される,声を挙げても無視される,顔をしかめても無視されるという目に遭ったならば,その人はどうなるか?いじめの手口でそういうのがあるそうだ。シカトとかいう。たいがいはそういう目に遭ったら怒る。怒りは復讐に転じるであろう。母子の間でそういう目に遭った子どもが後年どういうことになるんだか,想像したくもない。』(同書17~18頁)。

なお,「想像したくもない」とありますが,少し後ろのほうで『いるのに見てもらえない子はどうなるか』ということでちゃんと述べられておりまして,『親に否認された子どもはまず間違いなく仕返しする。非行少年になったり,残忍な行動に走ったり,多くは病気になる可能性が高い』とあります(同書30頁)。

「まず間違いなく仕返しする」などと断言されるとなかなか恐ろしいものがありますが,「否認」の持つ(破壊的な)効果は,心に留めておくべきと思いました。

そしてまた,「否認」の対極として,我が恩師の「ありのままのあなたでいいんだよ,と子どもを受容することが,子どもに「居場所」を与え,生きる力になる」という言葉(こちらのエントリ「恩師結婚お祝いパーティー」をご覧ください。)を思い出しました。

弁護士櫻町直樹

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